Effect of a Mediterranean-Style Diet on Endothelial Dysfunction and Markers of Vascular Inflammation in the Metabolic Syndrome

Although it is not clear that how mediterranean style diet reduce the inflammation state associated with metabolic syndrome, C reactive protein has been suggested to form lesion directly with endothelial dysfunction and leukocyte activation.

Effect of a Mediterranean-Style Diet on Endothelial Dysfunction and Markers of Vascular Inflammation in the Metabolic Syndrome

A Randomized Trial

Katherine Esposito, MD; Raffaele Marfella, MD, PhD; Miryam Ciotola, MD; Carmen Di Palo, MD; Francesco Giugliano, MD; Giovanni Giugliano, MD; Massimo D’Armiento, MD; Francesco D’Andrea, MD; Dario Giugliano, MD, PhD

ABSTRACT

Context The metabolic syndrome has been identified as a target for dietary therapies to reduce risk of cardiovascular disease; however, the role of diet in the etiology of the metabolic syndrome is poorly understood.

Objective To assess the effect of a Mediterranean-style diet on endothelial function and vascular inflammatory markers in patients with the metabolic syndrome.

Design, Setting, and Patients Randomized, single-blind trial conducted from June 2001 to January 2004 at a university hospital in Italy among 180 patients (99 men and 81 women) with the metabolic syndrome, as defined by the Adult Treatment Panel III.

Interventions Patients in the intervention group (n = 90) were instructed to follow a Mediterranean-style diet and received detailed advice about how to increase daily consumption of whole grains, fruits, vegetables, nuts, and olive oil; patients in the control group (n = 90) followed a prudent diet (carbohydrates, 50%-60%; proteins, 15%-20%; total fat, <30%).

Main Outcome Measures Nutrient intake; endothelial function score as a measure of blood pressure and platelet aggregation response to L-arginine; lipid and glucose parameters; insulin sensitivity; and circulating levels of high-sensitivity C-reactive protein (hs-CRP) and interleukins 6 (IL-6), 7 (IL-7), and 18 (IL-18).

Results After 2 years, patients following the Mediterranean-style diet consumed more foods rich in monounsaturated fat, polyunsaturated fat, and fiber and had a lower ratio of omega-6 to omega-3 fatty acids. Total fruit, vegetable, and nuts intake (274 g/d), whole grain intake (103 g/d), and olive oil consumption (8 g/d) were also significantly higher in the intervention group (P<.001). The level of physical activity increased in both groups by approximately 60%, without difference between groups (P = .22). Mean (SD) body weight decreased more in patients in the intervention group (−4.0 [1.1] kg) than in those in the control group (−1.2 [0.6] kg) (P<.001). Compared with patients consuming the control diet, patients consuming the intervention diet had significantly reduced serum concentrations of hs-CRP (P = .01), IL-6 (P = .04), IL-7 (P = 0.4), and IL-18 (P = 0.3), as well as decreased insulin resistance (P<.001). Endothelial function score improved in the intervention group (mean [SD] change, +1.9 [0.6]; P<.001) but remained stable in the control group (+0.2 [0.2]; P = .33). At 2 years of follow-up, 40 patients in the intervention group still had features of the metabolic syndrome, compared with 78 patients in the control group (P<.001).

Conclusion A Mediterranean-style diet might be effective in reducing the prevalence of the metabolic syndrome and its associated cardiovascular risk.

メタボリック症候群における内皮機能障害と血管炎症マーカーに対する地中海式料理の影響

 地中海式料理がいかなる機序でメタボリック症候群に関連する炎症状態を減少させるかについては分かっていませんが,白血球活性化と内皮機能障害を通じて,CRP が直接病変形成に関与している可能性が示唆されています.

 考察の文中の丸括弧は参考文献の番号です.和訳の瑕疵の責任は私にありますが,この記事の利用に関する責任は各自でお願いします.

メタボリック症候群における内皮機能障害と血管炎症マーカーに対する地中海式料理の影響

無作為化試験

Katherine Esposito, MD; Raffaele Marfella, MD, PhD; Miryam Ciotola, MD; Carmen Di Palo, MD; Francesco Giugliano, MD; Giovanni Giugliano, MD; Massimo D’Armiento, MD; Francesco D’Andrea, MD; Dario Giugliano, MD, PhD

背景 メタボリック症候群は心血管疾患を減少させる食事療法の目標として同定されている.しかしながら,メタボリック症候群の疫学において食事の役割はほとんど理解されていない.

対象 メタボリック症候群患者における地中海式料理の内皮機能と血管炎症性マーカーに対する影響を評価すること.

デザイン,設定,患者 無作為化した単盲検試験が 2001 年6月から 2004年1月まで大学病院において成人治療パネル III によってメタボリック症候群を有すると同定された患者180 名(男性 99 名,女性 81 名)を対象に実施された.

介入 介入群患者 (n=90) は地中海式料理に従うよう指示され,全粒穀物,果実類,野菜類,ナッツ類,オリーブオイルの日々の消費をどうやって増やすかについての詳細な指導を受けた.対照群患者 (n=90) は慎重な食事(炭水化物 50% – 60%; 蛋白質 15% – 20%; 総脂質 30% 未満)に従った.

主な転帰の指標 栄養摂取.血圧とL-アルギニンに対する血小板凝集反応としての内皮機能スコア.脂質とグルコースの変数.インスリン感受性.循環血漿中の高感度C反応性蛋白 (hs-CRP)とインターロイキン6 (IL-6), インターロイキン7 (IL-7), インターロイキン 18 (IL-18).

結果 2年後,地中海式料理に従った患者では一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,食物繊維,ω-3脂肪酸に対するω-6脂肪酸の比率などにおいてより豊富に食物を消費していた.あらゆる果実類,野菜類,ナッツ類 (274 g/d) の摂取,全粒穀物 (103 g/d), オリーブオイルの消費 (8 g/d) もまた介入群では有意に高かった (P < 0.001).身体活動レベルは両群ともに 60% 近く増加していたが,群間での差異は認められなかった (P = 0.22).体重の平均値と標準偏差はそれぞれ – 4.0 [1.1] kg, - 1.2 [0.6] kgであり,対照群よりも介入群でより減少していた (P < 0.001).対象食事群と比較して,介入食消費群では高感度 CRP (P = 0.01), IL-6 (P = 0.04), IL-7 (P = 0.4), IL-18 (P = 0.3) が低下しており,インスリン抵抗性も減少していた (P < 0.001).内皮機能スコア (mean [SD]) は介入群では改善が見られた (+ 1.9 [0.6]; P < 0.001) が,対照群では変化しないまま (+ 0.2 [0.2]; P = 0.33) であった.2年間の経過観察時点で介入群の患者でメタボリック症候群の基準を満たす患者は40 名に過ぎなかったが,対照群患者では 78 名であった (P < 0.001).

結論 地中海式料理はメタボリック症候群とそれに関連する心血管危険因子の有病率を減少させる効果がある可能性がある.

JAMA. 2004; 292: 1440-1446

 メタボリック症候群は心血管疾患と2型糖尿病のリスクを増やす因子の集合からなる.最近の推定では合衆国においてメタボリック症候群は一般的であるとされ,成人人口の 24% が罹患していると推定されている.その臨床的同定方法は腹部肥満の腹囲測定,動脈硬化性脂質異常,血圧上昇,耐糖能異常に基づいている.本症候群の成因は大きすぎて不明だが,恐らく遺伝因子,代謝因子,食事を含む環境因子の複雑な相互作用を表している.最近の幾つかの研究では,炎症状態もまたメタボリック症候群の要素の一つであると示されている.さらに,低レベルの炎症が内皮機能障害に関連していることのエビデンスが蓄積しつつある.

 食事はメタボリック症候群の個々の特徴に繋がる観点であるにもかかわらず,本症候群の原因としての食事の役割は殆ど理解されておらず,少数の観察研究がなされているに過ぎない.成人治療パネル III のメタボリック症候群を有する患者への推奨は一般的な食事の推奨からなる.最近アメリカ心臓病学会の科学諮問委員会は,地中海式料理が心血管疾患の進展に対して印象的な効果を有すると述べた.

 本研究の目的は,メタボリック症候群患者において内皮機能障害と血管炎症とに対する地中海式料理の効果を評価することであった.我々は L-アルギニン,つまり一酸化窒素の自然の前駆体なのだが,これに対する血管の反応を評価することで内皮機能を研究した.更に我々は例のメタボリック症候群患者の低レベルの炎症状態を,循環血漿中の高感度 CRP の他 IL-6, IL-7, IL-18 を測定することで特徴づけた.これらの前炎症インターロイキンは恐らく血栓性の心血管イベントに関連しているか (16, 17),プラークの不安定化への関与を示唆されている (18).そこで我々は,植物性化学物質,抗酸化剤,αリノレン酸,食物繊維に富む食品の消費を増やすようにデザインした地中海式料理の無作為化試験を行った.

方法

 2001 年6月から 2004 年1月までの間に,イタリアのナプレスのナプレス第2大学代謝疾病部門の外来に通院する男女から参加者を採用した.本研究の参加者は坐位勝ち(1週間の身体運動が1時間未満)で過去6ヶ月以内に体重減少プログラムに参加した証拠がなく,安定した体重 (+- 1 kg) を維持している人々であった.栄養の研究に従事している参加者は一人もいなかった.各々の患者は完全な個人的健康状態と病歴に関するアンケートを受けた.これはスクリーニングツールとして役立った.

 本試験に登録するには患者は以下に示すメタボリック症候群の基準の3つ以上を有していなければならなかった.成人治療パネル III に定義されているが,(1) 内臓脂肪(ウエスト周囲径が男性で 102 cm より大,女性で 88 cm より大と定義).(2) 血清 HDL コレステロール低値(男性で 40 mg/dL 未満,女性で 50 mg/dL 未満).(3) 高中性脂肪血症(中性脂肪値が 150 mg/dL 以上).(4) 血圧上昇(130/85 mm Hg 以上).(5) 耐糖能異常(空腹時血糖値 110 mg/dL 以上).心血管疾患を有しているか,精神的問題があるか,アルコール中毒の既往(過去1年以内に1週間に 500 g 以上のアルコール消費)があるか,喫煙歴があるか,何らかの薬物を服用している患者は除外した.本試験はナプレス第2大学倫理委員会が承認し,全患者が書面で同意した.

 患者はコンピュータで発生させた乱数列を用いて介入群か対照群のいずれかに無作為に割り付けられた (Figure 1).インフォームドコンセントが済んだ後,中央の安全な場所で割付を行い,密封したフォルダの中に隠蔽した.訪問をスケジュールした看護師は無作為化リストに関与しなかった.しかしながら,介入に関与した職員は割付の群に注意せざるを得なかった.そこで,本試験は一部盲検化したものとなった.検査部門の職員は患者の群割付を知らなかった.

 例の介入食を消費する患者は伝統料理の有用性について詳細な指導を受けた.月に一回の少人数でのセッションを経て,介入群患者は食事カロリーを(必要があれば)減らすこと,個人の目標を設定すること,食事日記を付けてセルフモニタリングを行うことの教育を受けた.行動精神カウンセリングも提供された. 3日間の食事記録に基づいて個々の患者に合わせて食事指導を調整した.推奨される食事療法の成分は以下の通り.炭水化物 50% から 60%.蛋白質 15% から 20%.総脂質 30% 未満.飽和脂肪酸 10% 未満.コレステロール消費は1日 300 mg 未満.さらに患者は1日ごとに最低 250 g から 300 g の果実類,125 g から 150 g の野菜類,25 g から 50 g のクルミを消費するように指導された.加えて1日ごとに 400 g の全粒穀物(マメ,コメ,トウモロコシ,小麦)を消費すること,オリーブオイルの消費を増やすことを推奨された.患者は24ヶ月間プログラムに従事し,1年目は毎月,2年目は2ヶ月ごとに栄養セッションを開催した.プログラムへの準拠は会合への出席と食事日記の徹底によって評価した.

 対照食事を消費する患者は一般に口頭又は文書で,ベースラインにおいて健康的な食品の選択についての情報を受けその後訪問を受けたが,個人的なプログラムの提供は受けなかった.しかしながら,一般的に推奨される食事の主要栄養素の組成は介入群のそれと近似していた(炭水化物 50% から 60%,蛋白質 15% から 20%,総脂質 30% 未満).さらに対照群の患者は2年間の試験期間中,2ヶ月ごとに個人的に勉強会にも参加した.両群の全患者は身体活動レベルを増やす手引きを受け取り,1日に30分間,主にウォーキングだがそれだけでなく水泳や有酸素球技(サッカーなど)を行った.

 身長と体重は参加者が軽装で靴を脱いだ状態で Seca 200 体重計とそれに付属する身長測定器で測定した.24時間の栄養摂取量は食品成分表と患者の週ごとの食事記録から計算した.食事の順守と運動活動を評価するため,すべての参加者に3日間の完全な記録,つまり食事記録および就業中の身体活動,家事の身体活動,余暇時間の身体活動の完全な記録を求めた.食事は標準計量カップとスプーンおよび重量の近似ダイアグラムで計量した.

内皮機能

 内皮機能は前述したように L-アルギニンテストにより評価した.手短に述べると,血圧と心拍数の自動測定装置 (Omheda 2300; Finalpres, Englewood, Calif) にかけた後,血管内に 3g のL-アルギニン(L-アルギニン塩化物の 30% 溶液 10 mL),これは一酸化窒素の自然前駆体であるが,これを 60 秒以内に急速静注した.L-アルギニン静注前と投与 10 分後の 1.25 microM アデノシン2リン酸に対する血圧と血小板凝集反応を測定した.

 我々は両者の反応を加算した点数を発展させた.血圧に関しては1点を平均血圧 2 mm Hg 未満の反応とし,2点2 mm Hgと3 mm Hgの間,3点を3 mm Hg と 4 mm Hg の間,4点を 4 mm Hg と 5 mm Hg の間,5点を 5 mm Hg より大とした.血小板凝集反応については1点を 2.5% 未満の反応とし,2点を 2.5% と 5% の間,3点を 5% と7.5% の間,4点を 7.5% と 10% の間,5点を 10% より大とした.我々の研究においては,血圧と血小板凝集反応の平均値(標準偏差)は健康な男女(それぞれn = 50)の対照群において L-アルギニン静注に従って(基準値と10 分値との差異),- 6.5 (1.5) mm Hg, – 13% (3%) それぞれ低下した.その対応する最大点数は 10 点であった.

検査解析

 空腹時のインスリン感受性の推定値は恒常性モデル評価 (HOMA) により評価され,以下の式で計算する.空腹時血漿グルコース濃度 (mmol/L) ×空腹時血清インスリン値 (microU/mL) / 25.これはMatthews らの提唱による.その方法では HOMA 点数が高いことはインスリン感受性が低い(インスリン抵抗性である)ことを示している.病院の臨床検査室において血清総コレステロール値,HDL コレステロール値,中性脂肪,グルコース濃度を測定した.血漿インスリン濃度はラジオイムノアッセイ法により測定した (Ares, Serono, Italy).

 サイトカインと高感度 CRP 値の血清標本は測定まで – 80 度で保管した.IL-6, IL-7, IL-18 の血清濃度は高感度の定量的サンドイッチ酵素アッセイ法 (Quantikine HS, R&D Systems, Minneapolis, Minn) で重複して決定した.高感度 CRP は Behring Nephelometer 2 (Dade Behring, Marburg, Germany) を用いて免疫比濁法により測定した.我々の研究室では,健康な男女 50 名ずつ計 100 名の四分位範囲における中央値は以下のとおり.高感度 CRP 0.7 mg/L (0.2 – 3.2 mg/L), IL-6 2.1 pg/mL (0.3 – 5.2 pg/mL), IL-7 1.8 pg/mL (0.5 – 5.2 pg/mL), IL-18 129 pg/mL (50 – 275 pg/mL).

統計解析

 データは他に記述がなければ平均値(標準偏差)として記述する.データを治療目的により解析した.我々は連続変数にはt検定を,高感度 CRP, IL-6, IL-7, IL-18 にはWilcoxon テストを用いてベースライン値を評価した.我々は全患者をメタボリック症候群の3,4,5の要素数で分類し,高感度 CRP 中央値と HOMA 平均値との関係のエビデンスについて評価し,これらの群にまたがる内皮機能スコアを Jonckheere – Terpstra test を用いて評価した.我々は危険因子と栄養摂取量を比較した,経過観察期間の終了時点での値に基くテストを用いた2年後に,ベースラインからの差異に基く t-test を用いて.経過観察期間中に脱落した患者を除いた解析の結果は,脱落した患者の最後に得られた記録を含めてもさほど変化しなかった.それ故全患者のデータを含めて無作為化として表記した.Spearman 順位相関係数を用いてメタボリック症候群の変数とサイトカイン値の関連を定量化した.HOMA と内皮機能点数における治療効果,サイトカイン値,メタボリック症候群のそれぞれの要素は対応のあるt検定と Wilcoxon matched test を用いて体重変化を調整した後に検定した.治療後のメタボリック症候群を有する2群における参加者の割合を比較するのにχ二乗検定を用いた.P < 0.05 を統計的有意とみなした.すべての解析は SPSS 9.0 (SPSS inc, Chicago, Ill) を用いて実施した.

結果

 180 名の患者を介入群 (n = 90) か対照群 (n = 90) に無作為割付した (Figure 1).両群ともメタボリック症候群の要素数を含めて同等であった (Table 1).メタボリック症候群の要素数が増えるにつれて高感度 CRP 値と HOMA 点数が増加していた.一方で,メタボリック症候群の要素数と内皮機能スコアの間には逆相関が見られた (すべての傾向において P < 0.001) (Figure 1).Spearman 順位相関係数によると,以下の関連は否定的であった.つまり内皮機能スコアとウエスト周囲径 (r = – 0.30, P = 0.01), 高感度 CRP (r = – 0.33, P = 0.01), HOMA スコア (r = – 0.24, P = 0.02),IL-6 (r = – 0.21, P = 0.02).

 2年間の経過観察後,介入群の8名と対照群の8名が試験から脱落した.脱落者は全員観察開始後 24 週以降であった.介入群の脱落者は 24 週の観察期間後体重減少を認めており,生活習慣の変更を遵守していたことを示唆していた.

 ベースラインのデータは2群間での栄養摂取量に重要な差異がないことを示している (Table 2).2年後,介入群では対照群と比較して以下の傾向が見られた.すなわち一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸からなるカロリー摂取の増加,食物繊維摂取の増加,ω-3 脂肪酸に対するω-6 脂肪酸摂取量の減少,エネルギー・飽和脂肪酸・コレステロールの減少.果実類,野菜類,ナッツ類,全粒穀物の摂取量とオリーブオイルの消費量は介入群において著明に増加していた (Table 2).運動量は両群ともに増加していた(介入群 48 [SD, 10] 分間/週から 84 [SD, 36] 分間/週,P < 0.001.対照群 51 [SD, 9] 分間/週から 81 [SD, 38] 分間/週,P < 0.001).両群間での差異は認めなかった (P = 0.22).

 2年後,介入群の患者は体重,BMI, ウエスト周囲径,HOMA スコア,血圧,血糖値,インスリン値,総コレステロール値,中性脂肪値の著明な減少を認め,HDL コレステロール値,対照群において記録されたすべての値において著明な増加を認めた (Table 3).性別での差異は認めなかった.IL-6, IL-7, IL-18, 高感度 CRP の介入群での血清濃度は対照群のそれと比較して著明に減少していた.内皮機能スコアは介入群においては改善を認めたが対照群では変化しなかった.内皮機能スコアと高感度 CRP 値(r = – 0.36, P < 0.01) および HOMA スコア (r = - 0.31, P = 0.01) の間には負の相関が見られた.

 2年間の観察期間後の時点において介入群の 60 名の参加者はメタボリック症候群の要素数の減少を経験し (Table 3), 40 名がメタボリック症候群のままと分類されたに過ぎなかった.対照群においては大きく様相は異なり,78 名の患者が未だメタボリック症候群を有していると分類された (P < 0.001).体重変化の調整前のデータはメタボリック症候群の要素数の著明な減少を示し,2年間の観察期間後の時点では介入群で 30 名,対照群で 73 名がメタボリック症候群を有していると分類された.

コメント

 本試験においては,メタボリック症候群を有する患者による地中海式料理の消費は内皮機能の改善と全身血管炎症マーカーの著明な減少に関係していた.更に,介入食に従事した参加者はメタボリック症候群の要素数の減少を認め,全体のメタボリック症候群の有病率は約半分に減少した.体重でデータを調整したため,介入後のメタボリック症候群の全体の有病率の減少は保守的な測定を表す.これらの所見は共に地中海式料理がメタボリック症候群の治療に安全な戦略であり心血管リスクの減少に役立つことを示唆している.

 メタボリック症候群の個々の要素に対する現在のガイドラインは生活習慣の修飾(体重の減量と運動)を一次治療として強調しており,一方で心血管疾患ガイドラインが指示しない限り薬物治療は二次治療とみなされている (22).我々の試験では,介入食の効果は体重変化には控えめな関係を示していたが,CRP 値には効果がなく,対照群において運動を増量しても変化がなかったのと同様であった (23).体重変化で結果を調整したため,我々の所見は,体重の同時変化は大きく独立しており,地中海式料理はメタボリック症候群に関連する炎症状態と内皮機能障害を減少させる役割を演じているかもしれないことを示唆している.

 地中海式料理がいかなる機序でメタボリック症候群に関連する炎症状態を減少させるかについては分かっていない.主要栄養素の摂取が酸化ストレス物質を生じて前炎症状態に至る (24).この興味深いエビデンスは,健康な個人が高脂肪食を食べた後,抗酸化ビタミン (25, 26) や食物の抗酸化物質 (20) が一過性の内皮機能障害を改善する可能性により支持されている.更に,食事中の食物繊維含有の修飾がサイトカイン環境に影響を及ぼす可能性がある.高炭水化物食における食物繊維含有の上昇 (4.5 g から 16.8 g)は,健康な人においても2型糖尿病患者においても,循環血漿中の IL-18 値の減少に関係する (27).食物繊維が抗炎症作用を有する可能性があるため,最低でも腸管機能においては,介入食における食物繊維の含有は,最終的には他の幾つかの抗酸化機能を有する要素に拡大したとしても,主要栄養素の消化後に一過性に発生する酸化ストレス物質に影響を及ぼす可能性がある.ω-3 脂肪酸の抗炎症作用が示唆されたが,この効果の大部分はサプリメントの使用で見られるものである.

 我々の結果では,メタボリック症候群の要素数が増えると高感度 CRP が直線的に上昇し,内皮機能スコアが直線的に障害を示した.このことから以下のことが推測される.CRP は IL-6 の影響下に肝臓で産生される (9) が,メタボリック症候群に関する補助的なサイトカイン環境と内皮機能障害の間を橋渡しするものであるのかもしれない.強力なリスクマーカーであることに加えて,最近の知見では CRP は白血球活性化と内皮機能障害を通じて,直接病変形成に関与している可能性を示唆している (30, 31).更に,炎症反応の増加がインスリン抵抗性と代償性の高インスリン血症に至ることを示唆しており,炎症性サイトカインは脂肪細胞から放出され,重要な役割の大部分に起因している (9).代わりに,インスリン抵抗性は,インスリン抵抗状態におけるインスリンの抗炎症効果を減弱させた結果としての高サイトカイン産生に責任があるのかもしれない (32).機序のいかんに関わらず,メタボリック症候群に伴う前炎症状態はインスリン抵抗性と内皮機能障害に関連しており,炎症と代謝過程の間の接続を提供しており,血管機能にとって極めて有害なものである.

 我々の試験には1つの限界がある.個々の食事の要素が観察された変化を考慮できるのか否か,または代謝性危険因子がすべての食事変化の結果なのか否かについて定義できないことである.本試験のような複数の食事介入にもかかわらず,各々の介入を個別に評価することは困難であり,食事全般の手法は心血管疾患の予防に臨床的に有効と強調されてきた (33).Lyon Heart Study (34) は食事療法が心血管疾患を有する個人において致死的または非致死的心血管イベントの現象に役立つことを示した.Singh らは既に冠動脈疾患を有するかその高リスクの患者 1000 名を対象にインド地中海料理を試験した (35).対象食事群と比較して,介入食群では致死的心筋梗塞が 1/3 に減少し,心臓由来の突然死の割合が 2/3 に減少した.ギリシャにおける健康な成人 22,043 名を含む人口ベースの研究においては,伝統的地中海料理の順守は総死亡率の低さ,冠動脈疾患による死亡率の低さおよび癌による死亡率の低さと有意な関係がある (36).地中海料理スコアと死亡率の間には堅牢な逆相関があるにも関わらず,個々の食事の要素には目立った関連は見られない.そのため,部分の総和と言うよりも,多数の食事の要素の(相乗的,相互作用的な)累積効果が実質的なのかもしれないと示唆される.

 本試験の結果は最初の実証を示したもので,我々の知識にとって,全粒穀物や果実類,野菜類,豆類,クルミ,そしてオリーブオイルに富む地中海料理はメタボリック症候群の有病率とそれに関連ずる心血管リスクを共に減少させるかもしれない.そのような食事の心血管保護効果の1つの機序は,メタボリック症候群に関連する低レベルの炎症状態の軽減を通しているのかもしれない.体重減少がメタボリック症候群の治療の礎石として依然重要であることに違いはないものの,公衆衛生の視点からここにあの調査に似た食事の導入は,特に体重を減らせない人にとっては,心血管リスクに更なる利益をもたらすかも知れない.