サンプルサイズの計算は重要です.多くの研究者にとって統計的有意差が出なかった場合に,それがサンプルサイズ不足が原因によるものかどうかの判断ができないからです.全ての検定を網羅することはできませんでしたが,重要と思われる主な検定においてサンプルサイズを計算する方法を述べます.
χ2検定
リスク群・介入群と対照群との2群間で有効率・生存率を比較するにはχ2乗検定を行いますが,その際のサンプルサイズの算出には下記の式を用います.α = 0.05 (両側), 1 – β = 0.8 (片側)とすると Zα/2 = 1.96, Zβ = 0.84 として計算します.
効果量 δ がオッズ比で表現できる場合,サンプルサイズは下式で求まります.
: 対照群に必要なサンプルサイズ
: リスク群・介入群に必要なサンプルサイズ
: 対照群の実際の症例数
: リスク群・介入群の実際の症例数
: 対照群の有効率・生存率
: リスク群・介入群の有効率・生存率
: リスク群・介入群と対照群との有効率・生存率の差
Yates補正による χ2 検定と Fisher 正確確率検定
Yates 補正や Fisher 正確確率検定の際には N0 に補正項 C を乗じて補正する必要があります.リンクした書籍には平方根内の項に 1 を加算していますが,森實敏夫の教科書には加算していません.しかしウェブ上のサンプルサイズの計算の数式は合っています.
Student t 検定
対照群の平均値 μ0 およびリスク群・介入群の平均値 μ1 から効果量 Δ を計算し,そこからサンプルサイズを求めます.この場合,対照群とリスク群・介入群とでは分散が等しいと仮定しています.
log-rank 検定
log-rank 検定において必要なイベント数 e およびサンプルサイズ N は Freedman の方法で下式にて求まります.p0 および p1 は先行研究や試験開始後 1-2 年での累積生存率です.φ = 1 の場合,COX比例ハザードモデルのlog-rank検定に必要なサンプルサイズを四分表から計算するで説明した数式と同じ結果になります.
森實敏夫の教科書の記載には誤りがあります.イベント数 e を求める式の分母において,Freedman の原著では φ は括弧の外にありますが,森實敏夫の教科書の記載では括弧内にあります.ウェブ上のサンプルサイズの計算の数式は合っています.参考文献の Freedman の原著は有料です.
: 対照群に必要なサンプルサイズ
: リスク群・介入群に必要なサンプルサイズ
: 対照群の実際の症例数
: リスク群・介入群の実際の症例数
: リスク群・介入群の症例数と対照群の症例数との比
: 対照群の有効率・生存率
: リスク群・介入群の有効率・生存率
参考文献:
TABLES OF THE NUMBER OF PATIENTS REQUIRED IN CLINICAL TRIALS USING THE LOG RANK TEST