1 枚の黒ケント紙からハニカムグリッドを切り出す方法について

 ハニカムグリッドは通常ソフトボックス,またはライトバンクのディフューザーに装着して使用するものです.

 ソフトボックスやライトバンクの目的は点光源であるストロボ光を拡散光の面光源に変換することです.その結果,ストロボ単独では明瞭すぎる被写体の陰影の境界や背景に落ちる影が,柔らかい陰影・影に変わります.快晴の太陽光の光質は硬く,被写体の陰影は明瞭で地面に落ちる影もくっきりとしていますが,逆に曇天や雨天時の光質は柔らかく,被写体の陰影境界は滑らかで地面に落ちる影も境界はぼやけているのと同じです.雲は太陽光を拡散するディフューザーの役割を果たしており,ソフトボックスやライトバンクは曇天時の光質をシミュレートするものです.

 ハニカムグリッドはその面光源に指向性を与えて収束光を作り出しますが,元々が面光源であるがゆえに被写体の陰影境界を滑らかになり,落ちる影の境界はぼやけます.グリッド一つ一つの面積に対するグリッドの高さの比が大きいほど,グリッドのなす角柱の長軸方向への指向性は強まります.逆にその比が小さいほど指向性は弱まり光質は拡散光に近づきます.

 各グリッドから出た光は被写体に到達するまでの距離で若干拡散しますが,グリッドが少しずつずれて配置されていることで各々の光軸もずれて被写体に到達することになります(何度も書きますが,拡散の程度はグリッド面積に対するグリッド高の比で決まります).その結果,照射面で重ね合わされた光量は中心部はほぼ均一になり,周辺へ行くほどなだらかに落ちていきます.

HoneyCombGrid

 ハニカムグリッドを装着した状態でストロボ光を背景紙に照射した作例などを見かけますが,背景紙に映る形は基本的に各々のグリッド一つ一つの開口部の形と同じです.拡散されて境界が分からなくなっているだけです.グリッドの配置を変えてもその形は変わりません.

 光源から被写体までの距離に比例して拡散の程度は増し境界は不明瞭になっていきますが,同時に被写体から見たディフューザーの面積は小さくなっていくため,光質は点光源に近づいていきます.

HoneyCombGrid2

 さて,前回黒ストローを用いて作成したハニカムグリッドは開口部が円形のもので,光量を効率よく利用できるものではありません.今回は 1 枚の黒ケント紙からハニカムグリッドを切り出す方法について述べます.

  1. 仕様
  2. 材料
  3. 組み立て

1. 仕様

 ヒカル小町のガイドナンバーはせいぜい 13 で実用に堪えるものではありませんでした.今回はもう少しガイドナンバーの大きなスピードライトを想定してハニカムグリッドを作成することにします.自作のソフトボックスなどに装着する用途を想定していますが,紙製ですので発熱による発火には注意が必要です.仕上がりのイメージは下記のようになります.

HexagonalColumn

 1 枚の平面から正六角形のグリッドを切り出すには下図のような展開図を描く必要があります.実線はカッターで切り込み,点線はそれぞれ山折りと谷折りを示しています.

HoneyCombColumnA4

 六角形の辺の長さにかかわらず,全体として長辺側は 4 分の 3 の長さになります.短辺側はグリッドの厚さにより高さが変わります.照射角は六角形の辺の長さとグリッドの厚さの比によって変わります.市販品だとグリッドの網の細かさ,つまり六角形の辺の長さを変えていますが,ここではグリッドの厚さを変えることにします.

2. 材料

 材料は以下の通りです.

  • 黒ケント紙 (A4)
  • 接着剤

 黒ケント紙は Amazon でも購入できますが,100 枚単位と個人で使用するには多すぎます.今回は画材屋で版画和紙を必要な枚数だけ購入しました.

3. グリッドの組み立て

 設計図を元に黒ケント紙に定規とカッターナイフで切込みを入れます.定規を使ってずれないように折り目をつけます.山折りと谷折りが交互にあります.

HexagonalColumnPreCut

 折り目を付けたら糊代に接着剤を塗布して貼付していきます.糊代がどこかは折り曲げれば分かります.紙で出来ているので正六角形にはなりませんが,これも数が多ければ平均されて実用上問題なくなります.

HexagonalColumnPostCut

 実際にカッターで切り込んでみると,グリッドをあまり細かくすることはできませんでした.加工精度の問題もありせいぜい一辺 2 cm が限度のようです.

参照:ヒカル小町と黒ストローを使ってハニカムグリッドを自作する

100円ショップとヒカル小町でスヌートを自作する